- はじめに
- 論文データ/統計情報の紹介
- 信州医誌,62⑷:239~244,2014既往帝王切開後の経腟分娩試行(TOLAC) 成功に関する因子の検討
- 日本周産期・新生児医学会雑誌 第59巻 第3号青森県における帝王切開後試験分娩の取り組みについて(令和5年)
はじめに
この記事の目的
TOLAC(帝王切開後の経腟分娩トライアル)は、とても感情論になりやすいテーマです。
インターネット上には、「危険だからやめたほうがいい」という不安を強く煽る意見がある一方で、「大丈夫」「意外と成功する」と楽観的に感じられる情報も多く、どれを信じればよいのか分からなくなってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
本記事は、TOLACを勧めることも、否定することも目的としていません。
また、「こうすべき」「こう決断すべき」という結論を押し付ける意図もありません。
この記事では、TOLACに関する論文データや統計情報をもとに、成功率やリスクについて客観的に整理し、冷静に考えるための判断材料を提供することを目的としています。
数字を知ることは、決断を迫られることではありません。
不安を過度に大きくするためでも、無理に安心するためでもなく、事実を知ったうえで自分なりに考えるための材料として、データを提示していきます。
TOLACを選ぶかどうか迷っている方が、感情に振り回されすぎず、自分にとって納得のいく選択を考える一助になれば幸いです。
また、便宜上、TOLAC成功、不成功という言い方をしますが、帝王切開も立派な出産であり、帝王切開を批判するものではないことも予め記載しておきます。

私自身、個人の考えとして、TOLACしても成功しない可能性が高いのであれば、はじめから計画帝王切開の方向に舵を切ることも検討していたため、自分の状態がTOLACする人たちの母集団の中でどの位置にいるか知りたく、論文を調べました♪
TOLACとは?
TOLACとは、帝王切開後の経腟分娩トライアルのことです。
基本的な情報は以下記事にまとめたので、良かったらご覧ください。

論文データ/統計情報の紹介
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院TOLAC(既往帝切後妊娠の経腟分娩トライアル)を検討中の皆様へ
書かれていること
- 当院で、37 週以降で陣痛が発来したTOLAC希望の妊婦さんのTOLAC成功率は90%前後
※「37週以降に自然陣発し、かつTOLACを実施した症例」に限ったものであり、すべてのTOLAC希望者に当てはまるものではありません。 - 子宮破裂はそのうち2例(0.39%)
- 当院では、2010年以前に比べTOLACの件数が増えているといえ、成功率はどの年代もおおむね90%程度。成功率は、母体の年齢や肥満度・今までの経腟分娩歴の有無・前回帝王切開の理由、などに左右されることも当院の研究でわかっている。
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信州医誌,62⑷:239~244,2014既往帝王切開後の経腟分娩試行(TOLAC) 成功に関する因子の検討
書かれていること
- TOLACを行った82例中,経腟分娩となった症例(TOLAC成功群)は64例であり,成功率は78.0%であった。なお,成功群における平均分娩所要時間は8.45±7.3時間であった。
- 今回検討した82例中子宮破裂は1例(1.2%)に認 められ,TOLAC管理中に胎児機能不全の診断で帝王切開を行ったところ,術中に子宮破裂が判明した症例 であった。
- 前回帝王切開の理由別TOLAC成功率、TOLAC成功群と不成功群の臨床的特徴(pdf3枚目)
👉母体年齢,前回分娩施設,非妊時BMI,不妊治療歴,帰省分娩の有無,胎盤付着部位,母体体重は,成功 or 不成功に大きな差は見られなかった。
不成功の場合は、前回手術が緊急帝王切開の割合が多く、今回の分娩週数が40週以降である例が多い傾向。
成功の場合は、不成功の場合よりも前回帝王切開から36ヵ月以上経っているケースが多く、経膣分娩の経験がある例も多かった。

前回帝王切開の理由別TOLAC成功率、TOLAC成功群と不成功群の臨床的特徴の表が興味深い!
自分自身のケースに当てはめて読んでみてください。
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日本周産期・新生児医学会雑誌 第59巻 第3号青森県における帝王切開後試験分娩の取り組みについて(令和5年)
書かれていること
- 対象者441人中159人(36.1%)がTOLACを希望し、そのうちTOLAC成功者は87人(成功率92.6%)。TOLAC施行者に周産期死亡や子宮破裂等はなかった。
- TOLAC成功(VBAC群) or 不成功した群(CS群)の比較では、不成功群の方が分娩週数、出生時体重が高かった。

母体、子ども(児)それぞれに関する情報について、VBAC群とCS群の比較表が興味深い!
(ドキュメント3枚目)
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仙台市立病院医誌 31, 11-16, 2011当科におけるTOLAC(trial of labor after cesarean)に関する検討
書かれていること
- 過去10年で253例のTOLACを扱っており,その80%以上が経腟分娩に至った。253 例のTOLACのうち1例に子宮破裂,重症新生児仮死が生じた。
- TOLACの成功率(VBACに至った率) が高かった理由として,分娩予定日を過ぎたという理由のみで帝王切開を行わず,自然陣発を待っていること,ソフロロジー式分娩法(無理な怒責をかけず,リラックスして分娩に臨む)の実践を行っていることで,子宮破裂や切迫子宮破裂を回避できている可能性があるこ となどが考えられる。
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平成8年度厚生省心身障害研究「これからの妊産褥婦の健康管理システムに関する研究」当科における既往帝王切開妊婦の経膣分娩に関する検討(秋田赤十字病院)
書かれていること
- 既往帝王切開妊婦99人のうち、77人にTOLACを実施し、84%(65人)が成功。
- 成功群を前回帝王切開の理由別にすると、前回が胎児仮死→成功率87%、骨盤位(逆子)→成功率95%、骨盤不均等→成功率100%、分娩停止→62%。
- 不成功だった12人の理由は、分娩停止8人、胎児仮死3人、低置胎盤1人。そのうち、前回帝王切開理由と今回不成功の理由が一致したのは、分娩停止の5人。
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日産婦誌57巻9号症例から学ぶ周産期医学4) 分娩 VBAC(2005年)
書かれていること
- TOLAC成功率は76%(41/54)で、成功 or 不成功において、分娩週数、出生体重の差異はなかった。
- 不成功(緊急帝王切開)13人のうち、理由は微弱陣痛による分娩停止8人が最も多かった。

不成功ケースの経過も紹介されています。
TOLACする場合も、もちろん緊急帝王切開になる可能性もあるので、参考までに読んでみても良いかも!
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まとめ
TOLACの成功率は、国内の複数の論文や施設データを見ると、おおむね70〜90%前後と幅があることが分かります。
ただし、これらの数値は調査された施設や年代、対象となる妊婦さんの条件によって幅があり、一つの数字だけで判断できるものではありません。
また、子宮破裂などの重篤な合併症は頻度としては低いものの、ゼロではなく、どの論文でも一定のリスクが存在することが示されています。
重要なのは、「成功率が高い」「低い」といった数字そのものではなく、自分がどの条件に当てはまるのか、どのようなリスクをどう受け止めたいのかを整理することです。
本記事で紹介したデータが、TOLACを選ぶ・選ばないという結論を出すための材料ではなく、主治医と相談する際の理解を深めるための参考情報として役立てば幸いです。
TOLAC関係で他にも記事を書いています!良かったらご覧ください。
TOLAC | ワーママライフ 気付きのキロク



